著作権をめぐるスティーヴ・アルビニとマーク・リボーのビーフまとめ

エレクトリカルオーディオ代表、エンジニアで、シェラック(Shellac)のギター/シンガーでもあるスティーヴ・アルビニと、ジョン・ルーリー率いる自称フェイク・ジャズ集団、ラウンジ・リザーズ(Lounge Lizards)でアート・リンゼイの後任として参加し、20を超えるソロ作品もリリースしているギタリストのマーク・リボーの2人が、著作権をめぐってネット上で意見をぶつけ合いました。

スポンサーリンク

話は1993年まで遡ります。アルビニはミュージシャン、エンジニアの他にエッセイストとしての顔も持っており、音楽業界のビジネス構造をユーモアを交えながら痛烈に批判した『The Problem with Music』をカルチャー誌・『Baffler』に寄稿。大変な反響を呼んだそうで、今読んでも非常に面白いです。『音楽の問題』として和訳したものを公開しています。

Steve Albini & Lil BUB reunite in Asbury Park in April at the Ca...

それから22年後の2015年。スペインのフェスティバル、プリマヴェラ・サウンド(Premavera Sound)にシェラック(Shellac)として出演予定だったアルビニは、ライブ前日にバルセロナ現代美術館で行われたイベントに姿を現し、ファンや音楽ライターたちとQ&Aを交わします。そこで以下のような発言をし、当日の模様の一部始終がbillboard誌に掲載されました。


…著作権の知的構造と、知的財産の所有権というのは現実的じゃないと思う。一度表現されたアイデアは共有知性の一部になる。一度表現された音楽は共有環境の一部になる。…著者がその著作権を所有して、それを使いたい人、見たい人はその人物にお金を払わなきゃいけないというモデルは、もう古いし期限切れだと思う。

Shellac, the noisy rock trio fronted by Steve Albini, will put out a...

アルビニの「著作権は期限切れだ」という意見に対して声をあげたのがマーク・リボーです。リボーはコンテンツ・クリエイターズ・コーリション(Content Creators Coalition/ C3)という、アーティストの権利を守るNPOの共同設立者でもあります。彼はすぐさまアルビニ宛にオープンレターを公開しました。


親愛なるスティーヴ・アルビニへ

…もしあなたが本当に『一度表現されたアイデアは共有知性の一部になり、一度表現された音楽は共有環境の一部になる』と信じているのなら、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスにサインをして、ご自身の全作品をパブリックドメインにしませんか?

それともあなたは、広告料を上げる釣り記事のごとく、支払いも許可もなしに私たちの作品を利用して広告収入で何十億も稼ぐGoogleや他のテクノロジー企業からやってきた回し者のみじめな偽善者なのですか?

Marc Ribot (@marcribotmusic) has written Steve Albini an irate open ...

オープンレターを受け取ったアルビニは、C3のFacebookページにコメントを投稿。


…音楽が一度リリースされればオーディエンスは自然にそれをシェアするということ。それに対してできることはあまりないということ。そして、それは概して良いことであるということ。…

…インターネットで誰かが自分の作品を見つけたために、自分に(誰かに)その対価が支払われるべきだという主張は、馬鹿げていると思う。…

Steve Albini's Shellac touring, playing Primavera Sound, Brooklyn, W...

この後、ウェブマガジン・Salonのライターがリボーにインタビューを慣行。アルビニの返信に対してさらに反論します。


なぜ著作権が重要なのか?それにはいくつか理由がある。…いまこの現在、音楽家アーティストは著作権によって収入を得ている。著作権がなかったら、金はもらえないんだ。ライブ演奏で得る収入もいくらかあるよ。その通りだ。ただ、レコード業界の崩壊で被った損失をそれで補えるなんて言うやつは嘘つきだ。

…著作権によって我々はコントロールをすることができる。自分が嫌いな映画の中や、胸糞悪くなるような政治広告に自分の音楽が使用されることを防ぐことができる。こちらの意志に反して自分の音楽が無償、無断で使用されることを防ぐことができる。…


この時点で2人の間に起こったビーフはネット上でも話題になっており、スレッドが立てられるほどに。今回のリボーのコメントに対して、アルビニはそのスレッドに直接コメントを書き込んでさらに反論します。


…Mr.リボーの「著作権で我々は収入を得ている…」という発言に当惑している。…約30年間音楽で生計を立ててきたにもかかわらず、著作権に関連して多額の収入があった覚えがない。…

…著作権を行使せざるを得なかったことはこれまでに一度もないし、誰かがその名を口にしたのを聞いたことすらない。自分のバンドや生活における日々の営みにおいて、どうすれば著作権が利益になるのかに興味がある。…

The one and only Steve Albini will speak to us Sunday at #DesertDaze...

この書き込みから数日後、リボーは『Copyright, Hypocrisy And Steve Albini(著作権と偽善とスティーヴ・アルビニ)』というタイトルの長文エッセイを発表。これにて2人のビーフに終止符が打たれた模様。


…誰が作品を「発掘」するか、は問題ではない。その「発掘」が行われるビジネスの現場で、クリエイターとの合意なしに作品を彼らの敷地に配置することを許可するか…否かだ。

…数年前、インターネットの「ロングテール」効果が、アルビニや私がいるシーンで活動するニッチな市場のアーティストたちを救うというでたらめが多く出回っていた。非常に残念だが、物事はそのようにいかなかった。

…(C3のメンバーは)大きな声ではっきりと、大手の企業利益のために自分たちの生活が破壊され、権利が踏みにじられるのを見るのはもううんざりだ、と言い続けている。

Marc Ribot shares "Copyright, Hypocrisy And Steve Albini" essay pic...

2019年、自身のスタジオとジャンクエフェクターを紹介するスティーヴ・アルビニ。

2018年、イタリアのテレビで「Bella Ciao (Goodbye Beautiful) 」を演奏したマーク・リボー。

参照

オリジナルの記事はこちらから。

The Problem with Music by Steve Albini (the Baffler)

Steve Albini: Copyright Has Expired (billboard.com)

Read Marc Ribot’s Furious Open Letter to Steve Albini (SFWEEKLEY)

Read Marc Ribot’s Angry Open Letter To Steve Albini – Stereogum (gearslutz.com)

Steve Albini is wrong: “If we don’t have copyright, we don’t get paid” (salon)

The Beef About Copyright Continues with Steve Albini (vice)

スポンサーリンク
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

Follow

スポンサーリンク