イギー&ザ・ストゥージズ 『Raw Power』にまつわる話 (1973)

イギー&ザ・ストゥージズの名作『Raw Power』(1973)。ストゥージズとしては3枚目の作品です。日本題は『淫力魔人(いんりょくまじん)』。

ストゥージズは1967年にミシガン州のアナーバー(デトロイトのすぐ隣の町)で結成。オリジナル・メンバーはイギー・ポップ(Vo)、ロン・アシュトン(G、アシュトン兄、2009年没)、スコット・アシュトン(Dr、アシュトン弟、2014年没)、デイヴ・アレクサンダー(B、1975年没)。69年にジョン・ケールがプロデュースした1stの『The Stooges』、70年に『Fun House』をリリース。70年の8月にベースのデイヴが解雇(泥酔状態でライブにやってきたため)。別のベーシストを立て、さらにセカンド・ギタリストとしてアシュトン兄弟、アレクサンダーの幼なじみだったジェームズ・ウィリアムソンが加入。しかし、この頃にはロン・アシュトンを除くメンバー全員が深刻な薬物中毒に陥っており(当時のマネージャーがすすめたものだった)、イギーはライブ中に立つことができなくなるなどして、契約していたレコードレーベルのエレクトラは彼らを解雇。71年の7月に解散が発表されました。

その後イギーとウィリアムソンは共に活動を開始し、ホームであるアナーバーを離れます。71年9月にイギーはデヴィッド・ボウイと出会い、意気投合。その翌日、ボウイのアドバイスもあって彼のマネジメントを行っているMainManと契約することに。数か月後にはコロンビアとレコード契約を結びます。

1972年の3月にイギーとウィリアムソンはロンドンを訪れ、新たなバンドを組むためにオーディションをするも納得いくメンバーは見つけられませんでした。そしてアシュトン兄弟が呼び戻されます。今回はロン・アシュトンがベースを担当し(彼はもともとベーシストでした)、同じメンバー・別編成で『イギー&ザ・ストゥージズ』として再出発。同年9月10日~10月6日にかけて『Raw Power』収録曲が録音されました。

楽曲のプロデュースおよびミックスはイギー自身で行いました。しかし最初期のミックスはバランスが悪く、MainMan代表のトニー・デフリーズは、ボウイにリミックスを頼むかさもなくばアルバムの発売は見送られることをイギーに伝え、彼もこれに同意。1972年10月、ボウイは(予算の都合上たった一日で)リミックスを行いました。イギー曰く、「君はプリミティヴだからさ、君んとこのドラマーは丸太をぶん殴ってるような音にしたほうがいいね!」とボウイに言われたとのこと。一方でボウイは以下のように回想しています。


…彼が24トラックテープを持ってきたんだ。1チャンネルにバンドの演奏、もう一つにリードギター、もう一つにボーカル。24トラックなのに3つしか使ってなかったんだよ。彼が「さて、何ができるかな」って言うから「ジム、ミックスするものなんかないよ」ってね。だから、ただボーカルのボリュームを上げ下げしてね。「Search and Destroy」を含む5、6曲がそんな感じだった。音色が独特なのは、たまにギターの音量を上げたりミュートしてるだけだからなんだよ。


翌年、1973年2月に『Raw Power』は発売されました。

1993年にはイギーが行ったオリジナルミックスを収録した『Rough Power』が発売。1997年、『Raw Power』がCDで再々発される際にイギーは再度リミックスを施し、これが現在主に流通しているバージョンとなっています。(しかし、ボウイ本人をはじめ、ロン・アシュトン、ジェームズ・ウィリアムソン、元リチャード・ヘル&ザ・ヴォイドイズのギタリスト、ロバート・クインなども、ボウイミックスを支持しています。ボウイミックスは『Raw Power (Legacy Edition)』で聴けます。)

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アルバムのオープニング・トラックは「Search and Destroy」。今や皆がよく使うフレーズになりました。2010年CLASHに掲載されたイギーのインタビューによると、TIME誌の記事を読んでいた時にインスピレーションを受けたそうです。


「Search and Destroy」の歌詞、コンセプトは、TIMEから拝借したような感じなんだ。よく夢中になって読んでたんだよ。というのも、俺にとって彼らは支配層の代表だからね。権力者を象徴する言葉が載っているよね。だから、彼らがどんなことを話してるのかを読むのが好きだったんだ。その言葉の数々を逆の方法で利用してたんだよ。あの曲はそんな風に作ってたね。


「Search and Destroy」は、もともとベトナム戦争で使われた戦術の名前だったそうで、「敵を見つけ、破壊し、撤退する」という意味だそうです(「索敵殺害作戦」と日本語に訳されてます)。元ブラック・フラッグのヘンリー・ロリンズは背中にSearch and Destroyの文字のタトゥーをしてますね。

ストゥージズはパンクの始祖と言われてるだけあり、同曲はたくさんのパンクキッズにカバーされてます。以下はその一部。

デッド・ボーイズ (1977)

ディクテイターズ (1977)

セックス・ピストルズ(シド・ヴィシャス、1978)

レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(1991)

参照

Wikipedia

LOUDER

CLASH

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