スティーヴ・アルビニ マーク・リボーへの返信その2 (2015)

2015年、シカゴのエレクトリカルオーディオ代表、スティーヴ・アルビニと、ギタリストのマーク・リボーが著作権について互いの意見をぶつけ合いました。当時の発言内容を翻訳して紹介しています。

前回リボーはSalon誌にインタビューという形でアルビニに反論しました。

当時Gearslutz.comというサイトの掲示板に本ビーフに関するスレッドが立てられ、現在も閲覧可能です(こちらから)。本人がコメントを投稿していますが、それによるとリボーへの返信としてアルビニはこのSalon誌のインタビューページのコメント欄に反論を送ったそうですが、エラーで投稿されなかったようです。そのため本人が直接掲示板に本文をコピペして投稿しています。以下はその和訳です。

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スティーヴ・アルビニです。現在仕事中のため、Mr.リボーの発言に対して要点ごとに返答する時間がない。それに、もしSlate1が自分からの返信に興味があれば連絡をよこしてるはずだから、恐らくこのメッセージは歓迎されていないのだろう。しかし私は、Mr.リボーの「著作権で我々は収入を得ている…」という発言に当惑している。 確かに、自分がいるのはMr.リボーと同じシーンではない(契約しているアーティストのサイドマン2ではないし、助成金/後援を受けたジャズシーンでプレイしているわけでもない)。しかし、約30年間音楽で生計を立ててきたにもかかわらず、著作権に関連して多額の収入があった覚えがない。私は人のレコードのために働いて収入を得ている。自分のバンドはライブを行うことで収入を得ている。人々は我々が制作したレコードやその他の物販を購入し、それらの利益は自分らでシェアしている。

映画、テレビなどのための音楽制作はめったに依頼されないが、依頼があった時には価格を決めて、先方はそれを支払い、それで終わりだ。これらの試みにおいて著作権がなんらかの役割を果たしたことはなかった。今までに得た著作権に関連した唯一の収入は、海外放送向けの集金団体が頼んでもいないのに支払ってきたわずかな額だけ。

おそらくMr.リボーの立ち位置は、私および私のバンドに金を使っているすべての人々は、著作権法で強制しなければ一銭も払わないだろう、というものだと思う。しかし、A)ライブ、レコード、その他の利益分配に関してそれは明らかに真実ではなく、B)自分は詐欺師とは関わらない、ということだ。著作権を行使せざるを得なかったことはこれまでに一度もないし、誰かがその名を口にしたのを聞いたことすらない。自分のバンドや生活における日々の営みにおいて、どうすれば著作権が利益になるのかに興味がある。

著作権とは守勢的なもの、不安の産物なのではないか。誰かがお金を払わなかったらどうするのか?もし利用されたらどうするのか?誰かに支払われたお金を取り戻す方法はあるのか?これらの不安に対して自分ができる答えは、私はそんなものはいらないし、利用されているとは思わないし、誰かの飯を分けて欲しいなんてこれっぽっちも思わない、ということだ。もし何かに金を支払ってもらう必要があるのなら、ビジネスをしている人物と金額を算出して、もらうだけだ。自分との間に何のいざこざもない世界のどこかにいる誰かは、自分に対して支払い義務があるだなんて、一度たりとも思ったことはない。

自分の作品をクリエイティブ・コモンズに登録したらどうか、というMr.リボーの提案は奇妙だ。なぜなら、私の指摘は理由は何であれ事実上すでに自分が気にかけていることであったはずだし、さらにMr.リボーは、彼を怒らせた、私は契約しないという趣旨の同記事を読んだ上で、そのような契約をしたらどうかと勧めてきている。私がずっと昔に執筆した上記で言及されている記事『音楽の問題(The Problem with Music)』はBaffler誌上に掲載されており、その発行人欄には、出版物全体がパブリックドメインになる旨が記載されていることも指摘しておく。にもかかわらず、同雑誌がブートレグとして出回ったことはないし、アンソロジーでその記事が再掲載される際の支払いが遅れたこともない。著作権を行使して自分のバンドの音楽を誰かが楽しんだり活用したりするのを阻んだことは一度もないし、今それをしようともしていない。

自分の人生において著作権というものは大した問題ではなく、それが巨大エンターテイメント企業に、ある側面をコントロールする力を与えている、というだけ。著作権のおかげで、レコードレーベルのBIG 33は、ストリーミングサービスを強引に利用して、所有権と有利な契約条件を自身に与えることができた。ASCAPおよびその他のパフォーマンス権利集金団体も同様に、自分がライブを行う会場から金を吸い上ている。表向きはそれで自分たちに金が支払われるようになっているが、彼らが金を巻き上げなければ自分達への支払いはとっくに終わっていることには見て見ぬふりをしている。ディズニーやその他の巨大知的財産権は、本質的にはもはや何も公共所有権に該当しない著作権条項を拡大しようと、とても効果的にロビー活動を行ってきている。ウォルト・ディズニーはパブリックドメインの物語から身代を築いたし、彼の企業遺産にいたっては今や誰もそれを成し遂げることはできない。

著作権に終止符を打とう呼び掛けるつもりはない。面倒だったりそれ以上に酷い状況を除けば、現役ミュージシャンにはさほど問題ではないと思うし、それに聴衆は明らかにそれを快くよく思わないだろう。これらの状況はその用途と構造の変化を訴えている。この状況に対して、自分がさも明確な答えを持っているようには振舞わない。しかし、一度公共の手に渡った芸術をコントロールしようとしても所詮失敗に終わるのは分かっているし、そのために自分自身をイラつかせたり、普通に振舞っている普通の人々を非難したりもしたくない。

(コピペ転載終わり。以下掲示板に書き込まれた本人からの追記)

そして同Facebookスレッドから、現役ミュージシャンの収入源を研究した学術論文に、全ミュージシャンの収入の94%が著作権とは無関係であることが示されている。予想通り、ミュージシャンが有名であればあるほど数値は偏るが、(著作権はミュージシャンが収入を得る主な方法であるという)リボーの論拠は明らかに間違いだと証明されている。


この後にリボーは非常に長いエッセイを公開し、このビーフに終止符を打ちます。

Marc Ribot shares "Copyright, Hypocrisy And Steve Albini" essay pic...

脚注

  1. salon誌で掲載されたマーク・リボーのインタビュー記事を書いた、スコット・ティンバーグ氏が寄稿している雑誌のことだと思われる。
  2. いわゆるスタジオ・ミュージシャン。
  3. Sony BMG、ユニバーサル・ミュージック・グループ、ワーナー・ミュージック・グループの3社。
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