ギャヴィン・ブライアーズ 「Obscure Records」

Obscure Records オブスキュア・レコードは1975年にブライアン・イーノが設立したレーベルで、78年までの間にイーノが監修を務めた、クラシック/アンビエント/実験音楽といった作風の10作品を発表しました。レーベル設立にはイギリス人コンポーザーでコントラバス奏者のギャヴィン・ブライアーズも大きく携わっており、レーベルの第1弾として発表されたのがブライアーズの『The Sinking of the Titanic(タイタニック号の沈没)』。

1912年タイタニック号沈没事故の際、乗客が逃げまどう中で、船上のバンドは船が沈む最後の瞬間まで演奏を続けたという話を基に作られた作品です。生き残った人々の証言から、バンドが最後に演奏したといわれる「Autumn(秋)」、「Aughton」、「Nearer, My God, to Thee(主よ、御許に近づかん)」といった曲の旋律をメインに、船(音楽)がゆっくりと海の底へと沈んでいく様子を表現した、幻想的な雰囲気のある傑作です。

B面はイギリスの浮浪者の鼻歌に伴奏をつけた「Jesus’ Blood Never Failed Me Yet(イエスの血は決して私を見捨てたことはない)」で、何気ないメロディがリフレインされるたびに美しさを増す、こちらも素晴らしい作品。

現在入手できるものは2015年にブライアーズ本人のレーベル・GB Recordsから再発されたリマスター盤で、オブスキュアから発表されたものとは曲順・ジャケットが変わっています。こちらのリマスター盤のブックレットから、ブライヤーズがオブスキュアについて言及している箇所をピックアップして翻訳しました。

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オブスキュア・レコード

オブスキュアの第1弾となった1975年の今作品は、1971年にデレク・ベイリー1のインカス・レーベル用に録音した1曲を除けば、私の初の録音作品であり、同シリーズのオープニングとして同時にリリースされた4作品の内の1つであった。経緯は以下のとおり。

私は数々の「アンダーグラウンド」映画の音楽を手掛けていた。それらはアラン・パワーによってプロデュースされた作品であり(「Jesus’ Blood Never Failed Me Yet」で使用した、老人がうたう歌を録音したのもアランが作った映画の製作中だった)、彼は映画のサウンドトラックのリリースに興味を示していた。1973年、彼はブライアン・イーノにコンタクトを取り、我々3人はアイランド・レコード2でクリス・ブラックウェルと会った。

しかし、1973年のオイルショックの影響でレコードの生産が制限され、数々のレコーディングプロジェクトが棚上げとなり、このプロジェクトもその煽りを食らってしまった。しかし数年後、ブライアンはアイランド・レコードとともにこのアイデアを復活させたのだった。

ブライアンはウィンチェスター芸術大学の美大生で、1960年代後期と70年代初期にジョン・ティルブリー3と私が行ったコンサートや、その他の実験音楽のコンサートに姿を現していた。彼はこの作品を世に出したがっていて、当時の新しい音楽の数々とは異なり、聴衆を怖がらせる必要はないと感じていたようだ。私はロキシーミュージック4に入る以前から彼をのことを知っていたが、当時の音楽業界における彼のポジションはすでに、1975年に我々のレコーディングを実現させ、オブスキュア・レコードというアルバムシリーズをスタートできるほどのものであった。そして、やがて10の作品がリリースされた。

ある意味で、だが、オブスキュアのアルバムは厳密には「リリース」とは言えず、これは私のせいでもあった。「Obscure5」はブライアンと私がほぼ一緒に考えた名前だ。当時私は「探求」という考え、(目次に小さくヒントがある程度で)とてつもない努力を費やしてようやく何かを見つけ出した時に感じることのできる喜び、というものにとても興味があった。そこで、自分たちのレコードを簡単には見つからないようにしよう、というアイデアが浮かんだのだった。最初の段階ではなんとメールオーダーでしか購入することができず、そのせいでアルバムに対する批評的な反応は皆無。マーケティング戦略の観点からいってこれは明らかに失敗だった…

外部からの批評的な反応はわずかしかなかったが、我々のサークル外にいるミュージシャンたちは明らかな敵意を持っていた。例えば、本作のレコーディングにはオーケストラのミュージシャンを多く雇う必要があり、それにはBBCシンフォニーオーケストラのホーンセクションも含まれていた。しかしレコーディングに参加したミュージシャンリストの中に彼らの名前はなく、ブラスにはチューバのジョン・ホワイトのみ、ストリングスにはジョン・ナッシュとサンドラ・ヒルを除いて誰一人名前が載っていない。これらのプロフェッショナルプレイヤーたちはこの作品を心底嫌っており、セッションが終わるや否や、請求書と「この作品は自分の評判を傷つける」という言葉を残し、アルバムのクレジットに自分の名前を載せないよう要求して、そそくさと去って行ったのだった。これをカバーするために、包括的な名前として「The Cockpit Ensemble」という名称を使用した。

一方、友人である故・デレク・ベイリーは、彼が「Jesus’ Blood Never Failed Me Yet」のオリジナルレコーディングのギタリストだからという理由だけで、いつも以上に酒を買い込んでいたとのことだった!

それに反して、1993年、Point (Music)のために同作品をレコーディングした時は、アンサンブルには世界中から超一流のプレイヤーを従えた。中にはニューヨーク・フィルハーモニックのメンバーも多くいて、そこには元コンサートマスターの姿も。そこでは皆が自分の名前を載せたがり、中には自分の名前のスペルを2度確認する者までいたのだった…


イーノの『Discreet Music』はオブスキュアの第三弾として発表されたもので、プロト・アンビエントといった趣。2~4曲目はブライヤーズが担当。カノンをアレンジした作品で、私は非常に気に入ってます。

この後イーノは『Music for Airports』から始まるアンビエントシリーズ4部作を制作します。

脚注

  1. Derek Bailey: 1930年生まれ、イギリス出身のギタリストで、大御所インプロヴァイザー。日本人ミュージシャンらとも数多く共演。
  2. オブスキュアの最初の7枚はアイランドレ・コードが製造・流通を担当した。
  3. 1936年生まれのイギリス人ピアニスト。1980年からは 自由即興演奏集団のAMMのメンバーとしても活動。
  4. Roxy Music: いわずもがな、イーノが在籍していたバンド。
  5. /əbˈskyo͝or/あいまいな、ぼんやりした、の意
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