マーク・リボー 「スティーヴ・アルビニは間違っている。著作権がなかったら金はもらえない。」 (2015)

2015年、シカゴのエレクトリカルオーディオ代表、スティーヴ・アルビニと、ギタリストのマーク・リボーが著作権について互いの意見をぶつけ合いました。当時の発言内容を翻訳して紹介しています。

前回、リボーのオープンレターに対し、アルビニはC3のFacebookページに返信コメントを投稿しました。

Steve Albini's Shellac touring, playing Primavera Sound, Brooklyn, W...

それから数日後、Salon誌はリボーにコンタクトを取りインタビューを慣行。2015年6月11日、同誌に掲載されました。以下はその和訳です。原文はこちらから。

注釈: インタビュー内でリボーが言及しているアルビニの発言、「メジャーレーベルとは契約するなっていう、メジャーと契約するのはクソだまりをクロール泳ぎすることだっていう話」は、アルビニが1993年に執筆したエッセイ『音楽の問題(The Problem with Music)』の冒頭に書かれています。

Steve Albini & Lil BUB reunite in Asbury Park in April at the Ca...

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ギタリストのマーク・リボーが、インディーロック・レジェンドの一風変わった知的財産に関する見解を批判した。

著作権批判は今や両サイドにとってトレンドになっている。インディーロック・ムーヴメントの重鎮、ミュージシャン兼レコーディングエンジニアのスティーブ・アルビニは、著作権を公共の場での喫煙と比較してきた。ニルヴァーナ、ピクシーズ、シルクワーム、マグノリア・エレクトリック・カンパニーなど様々なバンドの作品に関わってきたスティーブ・アルビニは、先日billboard誌にこう語った。

「著作権の知的構造と、知的財産の所有権というのは現実的じゃないと思う。一度表現されたアイデアは共有知性の一部になる。一度表現された音楽は共有環境の一部になる。人々が自然にアイデアや音楽や情報をやり取りする方法に対応するために、知的財産という考え方は自然と修正されていかなきゃいけない。著者がその著作権を所有して、それを使いたい人、見たい人はその人物にお金を払わなきゃいけないというモデルは、もう古いし期限切れだ。そのモデルを守ろうとしている人は、馬の背中に乗って車とやりあおうとしてるのと同じで…」

アルビニは音楽の著作権侵害に関してもさほど深刻に捉えておらず、『Piracy(パイレーシー:海賊行為/著作権侵害)』という言葉の使用に異議を唱えている。(「そもそも『Piracy』という言葉は、船乗りが暴力で人を殺して財産を物理的に奪うという意味だ。」

ミュージシャン、作家、写真家など、作品を通じて生計を立てている者の、開いた口が塞がらないという声が一斉に聞こえてくるのではなかろうか。我々はそのなかの1人である、ジャズ・ロック・エクスペリメンタル・ギタリストのマーク・リボーと話をした。彼はアーティストの権利を求める団体、コンテンツ・クリエイターズ・コーリションの役員を務めている。我々は彼が新作のレコーディングをおこなっているニューヨークのスタジオを訪ねた。

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―初めに、著作権は崩壊しているというアルビニの記事に対するあなたのフラストレーションに関してうかがいたいと思います。彼の言っているポイント、また何が間違っているのでしょうか?

まず、彼は文字通り、著作権の知的構造と、知的財産の所有権というのは現実的じゃないと言っている。著作権は期限切れ、時代遅れだと。むしろ時代遅れだという以上に、著作権というもの自体に否定的であるということが彼の声明から見て取れる。でも著作権は時代遅れだと自分は思わないし、それに実はスティーヴ・アルビニも同じ意見らしいんだよ。なぜかと言うと、彼にこう尋ねたんだ。「いいかい、著作権が良いものだと思わないのであれば、もっと簡単な方法がある。クリエイティブ・コモンズはライセンスを所有していて、フォームに書き込むだけで自分の音楽、もしくはその一部をパブリックドメインに提供することができる。口だけでなく、自分の作品を提供して行動で示さないか?」とね。 彼の返事は、ノーだ。正確には「すべてをパブリックドメインにしてはどうか、というあなたの提案は、もちろん自分が味わいたいブツじゃない。」というものだった。

―音楽の現場だけではないと思いますが、なぜ現役のアーティストにとって著作権は重要なのでしょうか?著作権はよくないとするリバタリアンと、著作権というシステムに風穴を開けようとするコピーレフト運動1があり、今や両サイドから批判を浴びています。なぜアーティストに著作権が必要なのでしょうか?

まず、君が俺から引き出そうとしている質問に対して答えようと思う。だがコピーレフトは本当に「レフト(左派)」なのかがまず疑問だ。そもそも自分はテナント組合、労働組合出身という背景がある。あらゆる組合から離脱して、そこで働く者のことなど気にも留めない人々や、社会主義を求めるあまり誤ってその産業をも破壊せんとする人々。それは本当に左派なのだろうか?と問いたい。それは俺の知っている左派じゃない。

なぜ著作権が重要なのか?それにはいくつか理由がある。まずひとつ目に、自分は有史以前のギフト経済社会だとか、有史以降のユートピアだとかは何も知らない。ただ、いまこの現在、音楽家アーティストは著作権によって収入を得ている。著作権がなかったら、金はもらえないんだ。ライブ演奏で得る収入もいくらかあるよ。その通りだ。ただ、レコード業界の崩壊で被った損失をそれで補えるなんて言うやつは嘘つきだ。

ラッキーなやつはそう多くないんだから。(カジノがある)アトランティックシティでだって運をつかむことはできるけど、それで経済は成長しないだろう。だから、まず著作権によって我々は収入を得るということ。その次に、今現在、収入という形で我々の仕事は社会に評価されているということだ。著作権によって収入を得るだけではなくて、それが我々に対する評価の形だし、そうやって自分たちの評価も知ることができるわけだ。

それに、著作権によって我々はコントロールをすることができる。自分が嫌いな映画の中や、胸糞悪くなるような政治広告に自分の音楽が使用されることを防ぐことができる。こちらの意志に反して自分の音楽が無償、無断で使用されることを防ぐことができる。今、(スティーヴ・アルビニも含めた)アーティストたちは特別扱いを求めていると多くの人が言っている。でもそれは特別扱いなんかじゃない。モノを作りに携わるすべての人々が持つ権利と同じものを我々は求めているだけだ。自分の作ったものを販売するまで所有することのできる権利。損をするのであれば販売しなくてよい権利。

これは特別扱いではないよ。普通に扱われているだけだ。

―要するにこれは民主主義の西洋における慣習の一部なんだと。このやり方で我々の社会は長い間機能してきた、だからラディカルなユートピア的アイデアを取り入れたりはしないと。そうおっしゃっているんでしょうか?

そう、そうやって自分たちの社会は機能してきた。そしてこのやり方を継続すべきか否かという問題を多くの人が提起していることも理解している。ただ、自分は絶対主義者ではないけれど、音楽業界をどのように再建していくかなんて話を、今この場で、劣悪な保険制度で実質南北戦争を再開させた、このアメリカという国で語ること自体がまったく現実的じゃないんだよ。

―先の会話で出てきたことですが、あなたはDIYという概念に強い興味を持っておられるんじゃないでしょうか。私はX世代(ジェネレーションX)で、自分が学校を卒業した80年代はDIYこそがすべての解決策であったように思います。今振り返ってみると、DIIYというのは実はもっと複雑で、危険なのではないかと思うんです。これに関してどのような考えをお持ちですか?

DIYは素晴らしいと思うよ。行動することを恐れている人や、芸術的に過激であったり、何らかの理由で文化を生み出す側に居れなかった人、そういった多くの人をクリエイティブにする力をDIYは持っていると思う。

ただ、是正のための行動を排除しようとするイデオロギーが生まれてしまうのがDIYの問題だ。自分自身で行動を起こさなければいけない状況で、逆にDIYがその行動を排除してしまい、結果、自分の視野を狭めてしまっている。

ここで一つ指摘しておきたいのが、スティーヴ・アルビニがのたまっている、メジャーレーベルとは契約するなっていう、メジャーと契約するのはクソだまりをクロール泳ぎすることだっていう話。いや、知っての通り、自分もインディーレーベルでやってきたし、自分のレコードはほとんどインディーレーベルから出してる。メジャーレーベルが俺の作品に興味を持ってた日々はもう終わってるよ。終了さ。

でも、この言い分にたちの悪い側面があるってことを言わなきゃならない。スティーヴ・アルビニや他のミュージシャンたちを苦しめているメジャーレーベルの酷い扱いは自分も見てきたし、もっと下劣なことも見てきた。そのほとんどが大企業、すべてが営利事業者で、不合理なやり方をしていた。だから、時には「Do It Yourself」が問題の解決方法であることもある。でもそれ以外では、レコードをリリースする会社やレーベルから公正な待遇を得るために戦うことこそが、問題解決の手段だよ。それに色々な手段があるのにも関わらず、(DIYというアイデアのせいで)それらを見ないようにすべきではないだと思う。

DIYのたちの悪い側面は、「誰もが同じように自分たちで何でもできる可能性を持っている」フリをしていること。それに尽きる。言い換えれば、一般的にインディレーベルでは大々的に宣伝をした後、最初の支払い額は少ない代わりに、最後にはもっといい額を払うというシステムになっている。でもそれでレコードが作れて、その時点でレコード制作費を支払えるのなら、素晴らしいことじゃないか。もし払えないなら、その時は、レコード会社っていうのは本質的には、レコードというジャンク債に資金提供してくれる、銀行だとか専門の投資会社みたいなもので。

だから、非難することは代替案にはならない。とても典型的な資本主義の…リスクとお金の交換だ。もっと金を出してくれる人物、ノイズギターのアルバム制作のために金を払って大きなリスクを負ってくれる人物は、売れるんであれば、それなりの分け前を要求するわけだ。

ここでこれを道徳的に論じるのであれば、「君は、前払いしてくれるレーベルと契約するために、クソだまりの中をクロール泳ぎしてるんだ」って言うのは、いい自転車を持った金持ちの子供が、「なんでそんな古くてダサイ自転車乗ってるんだい?こっちの方がいいって知らないの?」って言ってるようなもんだよ。 もしくは、家を買おうと思っている人に対して、「なんで銀行で住宅ローンなんか借るんだい?金利がいくらか知らないのか?なんで現金で払わないんだい?」って言うようなもんだ。 ポケットに20万ドル持ってるんならいいけどさ、ほとんどの人はそんなことないだろう。

―あなたはギタリストとして長きにわたって幅広く活躍されていますが、アーティストの権利、デジタル・エコノミーといった問題に関心を持たれたきっかけはなんだったのでしょうか?厳密には音楽的ではないことに対して、あなたにそこまでの時間を費やさせるものは何なのでしょう?

何年も前、80年代にテナント組合に所属していたんだ。話すと長くなるんだけど、とにかく住んでた家の大家にめちゃくちゃされたことがあって、それがきっかけでニューヨークのダウンタウンのテナント組合でボランティアの仕事を始めた。そこで組織するスキルの基本を学んだんだ。で、その後そこでの活動は止めたんだけど、自分の音楽コミュニティで問題があった時は刑務所弁護士みたいな役割になってね、「OK、もし困ってるのなら、同じように困っている人を呼んで、ミーティングをして何ができるか話し合ってみよう」ってね。どうすれば呼びかけができるか知ってるんだ。 そういう風に関わってきたんだ。デジタル著作権の問題が出てくる以前にも、例えばジャズフェスティバルなんかで、企業からお金が出ているのに、演奏家には普通のジャズクラブでもらえる程度の賃金しか払おうとしなかったりすることがあってね。低賃金だって。インディ組織としてそういった問題に取り組んだりもしたよ。だから、そんな風にして関わってきたんだよ。

―何か後押しがあったんでしょうか?あなたに現状の酷さを知らせたものは何だったのでしょうか?

まず、最初は自分も皆と同じように、デジタル革命は今までにない最高のものになるだろうと思ったよ。当時のマネージャーが「Oh No、これはすごいことになりますよ、心配はいりません」って常々言ってたのを覚えてる。

それから何かに気づき始めたんだ。レコードの契約時の提示額が半額になり始めた。そして1/3になった。もらう給料小切手が半額に、1/3になっていった。それでもみんな、「大丈夫、新しいデジタルソースから利益が入るから。金額もずっといいので、元も取れるようになる」って言うわけだ。 だから待ち続けた。待って、待って、それから自分の小切手を見たら6ドルになってた。サウンドエクスチェンジ2が初めて自分に送ってきた小切手か何かだったと思う。

それで、これはおかしいと。自分は何かを誤ったんだと思った。うまく登録できてなかったんじゃないかって。それで調べたら、手続きはすべて正しく行えていた。しっかり登録できていたことが判った。一方で他のミュージシャンたちと話してみると、彼らも自分と同じ状況だと。ただもう一方で、「これは最高だ!素晴らしい!」って言われ続けている。

それから人々は声を上げるようになった。「どうして自分たちに利益が入ってこないのか。海賊サイトに自分たちの作品が投稿されて、無料ダウンロードできる状態で、どうやったら自分たちに利益が入るのか?」って疑問を提示するようになった。 とにかく、詐欺まがいの話がそこら中にあるのを自分は見てきた。いま本当に起こっているのか、自分たちが声を上げることすらタブーになっている。それにロックンロールってのは教会で屁をこくようなもんだって、俺はずっと思ってきた。わかるだろ。

だから自分が言うべきでないことを言い始めたんだ。その時だね、自分が関わり始めたのは。それから詐欺やら嘘をさらに見かけるようになった。現状を支持する人の半分は、「ユートピアはすぐそこまで来てる」だとか「大金はもうすぐそこだ!」とかぬかしてる。 残りの半分はこう言ってる。「お前に金を受け取る権利なんてこれっぽちもない!著作権は悪だ…」って。


この後アルビニはさらにSalon誌のコメント欄に投稿。2人のビーフは続きます。

The one and only Steve Albini will speak to us Sunday at #DesertDaze...

脚注

  1. コピー「ライト」に対して、アメリカ人プログラマー、リチャード・ストールマンが提唱した「公開されたソフトウエアなどについて、利用・再配布・改変の自由を認めるべき」とする思想。(参照:デジタル大辞典より)
  2. SoundExchange: アメリカの著作権管理団体
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