ピクシーズ『Bossanova』発表時のインタビュー (1990)

1986年にマサチューセッツ州ボストンで結成されたピクシーズ。スティーヴ・アルビニがプロデュースした1st LPの『Surfer Rosa』や、「Here Comes Your Man」「Monkey Gone to Heaven」などが収録されている2nd LP『Doolittle』が有名ですが、個人的には1990年に発表された3rd LP『Bossanova』を一番好んで聴いています。サーフトーンズ(Surftones)のカバー「Cecilia Ann」から幕を開け、ブラック・フランシスがけたたましく絶叫する「Rock Music」、彼ららしからぬダンサブルな名曲「Dig for Fire」、天国に昇っていくように美しい「Havalina」など、全編通して血の通ってないような冷たさのある、不思議な空気が漂う怪作&傑作です。

プロデュースは『Doolittle』から彼らの復帰作『Indie Cindy 』の他、フーファイターズ、ジミーイートワールド、パティ・スミスなどを手掛けた名プロデューサーのギル・ノートン。

以下は1990年8月11日、メロディメイカー誌に掲載された彼らのインタビューの和訳です。

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murder(殺人)、mutilation(切除)、death(死)、crucifixion(磔刑)、blood(血)、evil(悪魔)、barbarism(蛮行)といったキーワードが散りばめられていないピクシーズのアルバムというのはどうにも想像し難いものだが、彼らの新しいLP『Bossanova』こそが正にそれである。元無法の背教者達に一体なにが起こったのか?丸くなったのか?売れたのか?なぜキム・ディールは、新作は「イレイザーヘッドよりもE.T.に近い」と考えるのか?なぜブラック・フランシスは豚へのラブソングを書くのか?以下の質問等を通してジョン・ワイルドがその答えを探る。

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キム・ディールは言う。「メロディーメイカーのインタビューを受ける時、いつもくだらないこととかどうでもいいことを話して終わるような気がする。私たちってそういうことで頭がいっぱいなのよね、きっと。それを止める理由もないけど。」「最近ケンブリッジにいて、2人組の男と話す機会があったの。すごく酔っぱらっちゃって、獣姦について話しちゃったんだから。」あなたがそういうことするからですかね。「そうそう。彼らのうち1人が羊としちゃったって告白したの。そんなこと言ったら会話がストップしちゃうじゃない。彼はどんな風にやったかまで説明してきたんだから。え、知りたい?オッケー。あなたがそこに立つでしょ、そしたら羊の後ろ足を自分のブーツの中入れて、そっからガンガンしちゃうのよ。」

親友がいない間に如何にして自分を楽しませるかという、ウェールズ人太古の芸術を彼女がデモンストレーションしている間に、バーは静寂に包まれた。

「私はオハイオ州のデイトンで育ったの、とうもろこしと家畜の話題しかない場所。農場に行ってクソして、豚に食べさせて。それが私の人生。」

ピクシーズと過ごす午後はいつもためになるのだ。ヘイ!キム!もっと見せてくれよ!やたら静かに90年代の幕が開いた後、ピクシーズは帰ってきた。最新シングル「Velouria」はナショナルチャートのトップ30をかすめた。今度のアルバム『Bossanova』は、おそらく発売初週のトップ5には食い込むことになるだろう。なんとも清い復活にも見える。しかしながら、バンドはここ最近のプレスインタビューでは妥協への非難に対する自己弁護に時間を割いていた。

「多分みんなこのアルバムが素敵すぎて、打ちのめされてるんじゃない。」キムは肩をすくめる。「同じところばっかり狙っててもだめなのよ。この4年間ずっとそれをやってたわけじゃないけど。どうやって人の心を動かすか、別の方法だって探らなきゃ。うん、たくさんの人が私たちは売れ線に走ったとか言ってるけど、そういうわけじゃないの。私たちも歳をとったし、叫んでばかりいることにはもうあまり興味がなくなったんだと思う。今回はもうちょっとスウィートな気分なのよ。」

「これ以上ああいう風にはできないって思ったんじゃなくて、こっちの方がかっこいいと思っただけ。どの曲も素敵じゃない。もしもっとロックな感じにしようとりたり、荒々しくしようとしたら、きっとダサくなってた。今回は違う気分だったってだけ。バンドは以前よりいい感じだし、自信もずっとついてきた。カリフォルニアで録音したっていうのもそれに依るところが大きいし。」

『Doolittle』から『Bossanova』制作までの間、4人はそれぞれの活動を行ってきた。ギタリストのジョーイ・サンティアゴはグランドキャニオンを探検し、チャールズ(ブラック・フランシス)はLAにある彼の家に新しい家具を買うために、自身のカナリア色のキャデラックでアメリカ中を旅してソロライブを行った。ドラマーのデヴィッドは「とても集中していた」らしい。ベーシストのキム・ディールはブリーダーズの活動で忙しく、薄汚く腐敗したアルバム1を制作していた。

「自分の中の汚い、堕落した部分を表現するのは別に大したことじゃなかったけど。」彼女は言う。「そういうのって無限に出てくるでしょ。ただそれを歌いたかったから歌ったの。私って素敵な声してるし、それを使うべきでしょ。このバンドで歌えなかったら、別のバンドで歌うだけ。自分に強みがあるなら、それを使う。最低でもやってみる。もしできなかったのなら、うまくできるようなんとかする。」

「ピクシーズでは歌う機会がどんどん減ってきてる。ウーアー言ってるだけで。それならシンセサイザーでいいじゃない。でもリードボーカルはチャールズで。それだけじゃなくて、彼は全曲歌ってるでしょ!彼は自分を誰だと思ってるわけ?このブタ野郎!でかい面しやがって!シャットアップ!飯食うだけの口を三分間閉じてキムにチャンスをあげなさいよ!」

(ブリーダーズのアルバム)『Pod』の制作はその気持ちを満たしてくれるものだった?

「もちろん。ブリーダーズでの唯一の問題は、他の二人(スローイング・ミュージズのターニャと、パーフェクト・ディザスターのジョセフィーン)が難しい言葉ばっかり使ってくること。いつでも大きな辞書を持って行って、彼女たちが何て行ってるか調べなきゃいけなかったんだから。」

ようやくピクシーズがLAで再会し、ニューアルバムの構想を練ろうとした時、地球が動いた。文字通りに。

「リハーサルの途中に突然地震が起こったの。」キムは当時を思い出す。「最初はライトがチカチカしだしたの。それから部屋全体が揺れだして。みんな楽器を地面に投げ捨てて狂ったみたいに走って逃げたの。外の駐車場に出たらヘヴィーメタルバンドの人たちもそこでめちゃくちゃ怖がってて。その内の一人が『おい!なんかベースサウンドがめっちゃ鳴ってたじゃないかよ!あれはロックンロールだったな!やったな!』って。」

ピクシーズは『Bossanova』で、ソニックユースの『Goo』、シュガーキューブスの『Life’s Too Good』、バットホール・サーファーズの『Hairway to Steven』、スローイング・ミュージズの『House Tornado』と同じ局面を迎えたようである。ともすれば、これはピクシーズにとって厳しい過渡期ではないだろうか。

『Bossanova』では、以前「Gigantic」、「Vamos」、「Crackity Jones」、「Gouge Away」で見せた狂乱は一端しか見せず、また「Where is My Mind?」、「Cactus」、「Bone Machine」、「Debaser」、そして「Wave of Mutilation」で爆発したヒリヒリのビートもごくわずかだ。

これらの14曲で、ピクシーズ4枚目のアルバム2は騒音控えめに、より静かな音を目指して作られたものであるという噂は裏付けられた。ピクシーズの強烈な爆発性を唯一引き継いだ曲は、絶叫ハードコア・サーフ「Rock Music」と、サーフトーンズの熱いカバー「Cecilia Ann」のみである。ほとんどの曲は「Tame」、「I Bleed」、「Here Comes Tour Man」、「River Euphrates」、「Monkey Gone to Heaven」の系統を受け継いだ、メロディアスで空気感のあるものだ。ピクシーズはポップになった。マジで、ラブソングまであって、その内の一曲は豚へのセレナーデなんだから。

「曲を書くなら、どうせなら大切なことについて書いた方がいい。」キムは言う。「チャールズは彼の頭の中で色んな映画を作り上げて、3分間の曲として吐き出すの。このアルバムはデヴィッド・リンチっていうより、スピルバーグよね。『イレイザーヘッド』3、『ブルーベルベット』よりも『E.T.』、『インディージョンズ』、『失われたアーク』って感じ。」

アルバムの最後を飾る曲「Havalina」は、チャールズと彼の彼女がアリゾナでイノシシに追いかけられた後に書いた曲だという。「それから彼、すごい素敵なラブソングを書こうと決めたのよ」とキムは笑った。「ずっと考えてたんだけど…そもそも豚って本質的にエロティックではないけど、かわいくて、シャイで、ミステリアスな生き物よね。特に子豚は。成長したらちょっと気持ち悪いけど。」

「ラブソングを書くつもりは全然なかったんだけどね。」チャールズは説明する。「ただ、そういう時期なんだろうね。以前は、みんなある曲を聴いて勝手にラブソングだって想像してたけど。でも例えば「La La La Love You」なんかは、全然ラブソングじゃないんだよ。多分「Velouria」はタイムトラベルに関するラブソングだね。「Blown Away」はニール・ヤングのラブソングっぽい感じ。誰か特定の人物や物事だったりするわけじゃないいんだよ。彼女の目とか、膝の裏とかってことでもない。「Make Believe」はデビー・ギブソンへのラブソングって感じだけど、まあジョークだよね。彼女と結婚したいと全然思わないし。いやまじで。」

もし『Doolittle』でアポカリプス的アートとスラッシュギターの組み合わせをやり尽してしまっているとするならば、当時彼らが持っていた狂暴な衝動のイマジネーションは既に消えてしまっているはずだ。今回、mutilation, suffocation, death, bleeding, gouging, hanging…(切除、窒息、死、流血、削り取り、吊り下げる)といった言葉は見当たらないが。

「今回のアルバムは全然残酷な感じはしないよね。」キムは同意する。「残酷性はチャールズの頭の中にはあったと思うけど、前回のようには出てこなかった。」「そんな特に残酷性にフォーカスした曲なんかないけど。」チャールズは言う。「例えば「Wave of Mutilation」とか聴いて、『殺人、磔、皆殺し、ね。』とか思うやつはいるかもしれないけど、実際には海流とかわいい動物について歌ってるだけなんだよ。喉を搔っ切るとか全然そういうのないから。」

チャールズ・マイケル・キットリッジ・トンプソン(25歳)4は、殺人衝動を消化するためにロックンローラーになった殺人代行人には到底見えない。どちらかといえば、少しだけ浪費癖のある普通教育を受けたビル・ヘイリー5といった感じだ。

「俺って基本的にオタクなんだよ。」彼は笑う。「ミスタークソまじめ。ミスターノーマル。人殺しをするようなタイプだとは自分では思わないけど。全然暴力的じゃないし。俺の彼女は犯罪学を学んでいて、殺人の大ファンなんだけどね。俺の方は別に犯罪や殺人に特別立ち向かったりしてるわけでもないけど、多分それって俺だけじゃないし。

 よく、ロックンロールがなかったら人殺しになってたなんて言ってるバンドいるじゃない。その考えが俺にはよくわからないんだよね。だってみんなちゃんと生活しながらバンドをやって、スタジオ借りて、スタジオ代払って、一生懸命やってるわけでしょ。そういう人が、もしかしたら死体をバラバラにしてユタの砂漠に埋めに行ってたかもだなんて、俺はそういう風には思わないけどな。」

キンバリー・ディール(元・ジョン・マーフィ夫人)6は現在28歳7で、地元の野球チームのチアリーダーになる夢を最近諦めたとのこと。

「ちょっと!ジョン!あんた『イレイザーヘッド』のヘンリー8みたいじゃない!」

こんな感じで彼女はチャーミングなのだ。

「私って多分すごく普通の子だと思う。子供の頃は問題起こしてばっかりで。やんちゃばっかりしてて。悪いこともしたりしてね。刑務所にはいかなかったけど、拘置所には一回行ったのかな。どっかにたむろしてたかなんかのせいだったと思うけど。酔っぱらっちゃって全然覚えてなくて。」

今まででやった一番酷いことは何ですか?

「知らないわよ!そんなの絶対教えないし!出ていきなさいよ!」

OK、今考えてることで一番汚いことは何ですか?

「ちょっと。私は大抵はクリーンな心でいるんだから。そんな汚らわしいこといつも考えたりしないし。でもこの5分間ここに座って考えてたのは、今一番したいのは自分の部屋に戻ってでっかいクソがしたいってこと。」

キムは昨晩マドンナを見たらしい。彼女はどんなだった?

「おっぱいの小さいベッド・ミドラー。」

ピクシーズで一番魅力的なメンバーは?

「全員。彼らみんなステキな一面を持ってる。」

ピクシーズで誰が一番信用できない?

「全員。誰にも処方箋を取りに行ってくれなんて頼まない。いやちょっと待って。私が一番信用ならない!いつも遅刻するし。どうしようもない。全然信頼できない。」

コントロール不可能な性欲の持ち主は誰?

「全員!私たちみんなファッキンモンスター!みんな本当にものすごい性欲あるから。でも最近は大人になったし、食欲も普通になってきたかな。」

ジョーイとデヴィッド、物静かでつまらない他のメンバーたちは、2分間だけ立ちよって屁のことを話してからベッドに戻って行く。デヴィッドは彼の超能力を披露してくれた。

「OK、タバコの箱持ってるかい?そしたら、中に何本入っているか数えて…その箱を手の中に持って…集中して。どれどれ…6本だな。」

いや、12本だけど。

「OK、二乗してたんだよ。」

デヴィッド、君はドラムだけやってればいいから、この野郎。

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ロックンロールとは、ラウドで、下品で、たくましくて、理不尽で、伝説的で、バカバカしくて、おぞましくて、官能的で…あるべきだ。

キムはこれに同意する。「いいロックンロールを聴いた時って、その後なんかクソ汚らしい気分になる。シャワー浴びたいくらいに汚らしい気分になるはず。ロックンロールって不快で、怖くて、気持ち悪い。ロックンロールはポルノ写真みたいなものだって、私はそう思う。いやらしい写真?そう!いやらしい映画?もちろん!羊とセックス?もちろんいいでしょ?録画して友達に送ればいい。売りだして。私は買うよ。汚らわしい方がいい。

 いいレコードをかける。いい気分になりたい。あのワクワクを待って。それから鳥肌が立つようなあのぼんやりした感覚を味わう。それからどこかへ行っちゃう。服を脱いで汚らわしいことをする。やればいい。「悪魔を憐れむ歌」みたいにさ。そうね…イタズラされているような気分で。」

「ロックンロール体験は今や作り物だね。」チャールズはこう続ける。「反逆性なんて全然ない。ロックは今やただの大衆文化だよ。強烈だったり、ヤバかったり、破壊的だったりするものはないよ。俺の母親をビビらせたりもしないし。彼女はピクシーズが大好きだよ。

 基本的に、もうロックンロールにヒロイズムはないと思う。ものすごい量のフェイク・ヒロイズムがあって、どれもクソ酷いものさ。ガンズ・アンド・ローゼスとかさ。ラジオ聴いてると本当にしょっちゅう流れてくるけど、マジで、あのバンダナ野郎なんてクソみたいに飼いならされちゃってるよね。アメリカのMTVなんてフェイク・ハードロックとフェイク・ハードメタルに溢れてるよ。あいつら全員どこからやってきたんだよ?どっかしらから湧いて出てきたんだろうけど、本物のバカばっかり。俺をイライラさせるのは、ヒロイズムの欠如でも、やつらの音楽でもなくて、あのクソみたいな服装なんだよ。マジで耐えられない。」

1988年の『Surfer Rosa』以来、評論家はピクシーズをロック最後の輝かしい振動の象徴として持ち上げた。サイモン・レイノルズは新刊『Bissed Out: The Apocalypse of Rock』の中でこう綴っている。「かつてロックンロールを作り上げた者たちが消えていき、浪費されていった後に産まれたのがピクシーズであり、そこにあるのは気まぐれに他愛もなく叫び、悲鳴をあげ、はしゃぎまわろうとする本能だけである。その無情さは休むことなく、それはまるでポルターガイスト、ロックンロールのゴーストだ。」

私としてはスティーブ・サザーランドのもっと簡潔とした評価の方が好きなのだが。

ピクシーズは黙ってはいられない。「俺たちが何かを代弁してるとは思わない。」チャールズは肩をすくめる。「俺らはただ曲を作ってやってこうとしているだけだよ。歌詞できたっけ?あれのギターパートはどうした?この曲はどんな曲だ?何が起こってるんだ?って。いつも同じようにに慌ただしくしてるだけで。

 現実世界と繋がっていたいなんて思ったことないよ。どちらかといえば、ビッグなバンドになりたいとは思ったことあるけど。確かなのは、俺らが素晴らしいロックンロールドリームの後継者だとか末裔だとかって思ったことなんて一度もないってこと。ただステージに上がって演奏してただけだからさ…ある種のやけっぱちさを持って。いい曲を作って這い上がってやるっていう必死な気持ちってのはあった。必死になって曲を演奏して。俺らが一番恐れているのはダメになること。自分たち自身に恥をかかせたりとか、それが一番最悪だよ。レコーディングする時なんか、毎回死ぬほどビビってる。もし出来が悪かったらどうしょうって。

 バンドを始めた時、俺らは自分たちの大好きなレコードと競い合ってる気でいたんだ。目標を持って。すごいバンドたちにずっと見られているような気分だった。でもそれから、実際にもっと心配すべきことがたくさん出てくると、忙しくて過去のことなんか気にしてられなくなってくるんだよ。チケットの売り上げがどうだとか、去年より名前が知れ渡ってるかなとか、ロックしてるかなとか、セルアウトしてるかなとか、そんなことをもっと心配するようになって。

 でも、自分たちは素晴らしいロックンロールの伝統を受け継いでやってきたなんて思ったことは一度もない。とはいえ、俺はパンク・ハードコアを見逃してきていたんだけど。ジョン・メイオールを聴いて育ったからさ。ピストルズのグッズなんて見たことなかったよ。何かを目指してはいたけれど、それが何かは全然わからないんだよ。U2ぐらいにはなって、気持ち悪がられるといいかななんて最近思ったけど。それが出来たら快挙だよ。そこまでいった人ってそんなにいないんじゃないのかな。完全にヤバいやつなのに大衆に受けしちゃうような天才は居たりするんだよな。

 単調なことを続けるよりも、何かの最前線にいたい。単純作業も悪くないけど、満足することはないから。自分の海賊テレビ番組が必要だし、月にも行きたい。モリッシーとデュエットもしたい。自分をどこかへ連れて行ってくれるような、いいロックミュージックを作り続けたい。ガリガリに痩せたい。自分の曲で痺れたい。

 見渡してみると、ゴミみたいな音楽が本当に多い。これはマジで。トップ40とバカみたいなポップソングはいつだってあるだろ。多分自分は間違ってるかもしれないし、もしかしたらただノスタルジックになっているだけかもしれない。だけど、昨日のバカみたいなポップソングって今日のバカみたいなポップソングよりましなんだよ。「Sealed with a Kiss」9が「I Should Be So Lucky」10よりいい理由があるんだよ。この先ストック・エイトキン・ウォーターマン11が手掛けた曲を、今日シュレルズ12やシャングリラス13を懐かしむように聴けるのかと言えば、俺はそうは思わないな。誤解しないでほしいのは、俺はストック・エイトキン・ウォーターマンの曲を資本主義的観点から楽しんでるよ。第一に、やつらのあの大胆さを尊敬すべき。クソみたいにすごい根性してるよ。」

今のロックの現状に鑑みて、時にそのむちゃくちゃな状況にも関わらず『Bossanova』は今季のベストアルバムとなり得る。ピクシーズがどれほどその実態から遠く離れているのか、それを思い出させることはないとしても、彼らは進むべき道を見つけるであろうことを示唆する、緊張感ある逸脱の些細な瞬間がある。特に「The Happening」は、丸ノコのようなゆっくりとした摩擦から、ハラハラさせるようなメロディへと振り幅を見せ、ある種の緊張感に到達している。真面目に礼儀正しく振舞うデニス・ウィルソンが、チャーリー・マンソンをビーチボーイズに誘ったことを想像してみてほしい…。

「ピクシーズはまだまだこんなもんじゃないって、以前はよく言っていた。そうだね、俺はこのアルバムすごく気に入ってるよ。新しいし、まだ全然ちゃんと聴けてないせいもあるかもしれないけど。

 でもメローな曲が作れたからすごく嬉しいんだ。挑戦して、作り上げるってことは俺らにとってすごく大事なことだからね。まだまだいけるよ。いつも苦労するってこともないしさ。
ある意味で、ここまで具体的にやったっていうもは初めてじゃないかな。最近までサーフ・ミュージックをよく聴いてたんだよ。だから、サーフ・SF系の物ができたら面白いんじゃないかと思ってね。SFのことで言うと、銀河系がどうのこうのっていうのは全然考えてなかったんだ。多分それよりも『イレイザーヘッド』とか、『レポマン』
14とかそっちかな。もっと別世界のような。リンチの映画みたいにさ、ヤバいやつらにハメられて、突然何かがおかしいって気づくような。『おい!俺のリビングに三つ首のモンスターがいるぞ!』とかそんなんじゃなくて。

 だからこのアルバムのサーフとかSFってのは、俺らの中で流行ってたワードなんだよ。雰囲気作りに一役買ってくれたって感じかな。プロデューサーのギル・ノートンを無理やり連れてって、ハリウッドヒルズの周りをドライブしてたんだ。古いサーフミュージックをテープで聴きながら。多分俺らはいつでもこういう風に何かしらに偏ってるんだよね。今回はそれが音楽性に影響するぐらいどっぷり浸かってた。椅子に座って『よし、ミューティレーションについて考えるんだ。絞殺についてはどうだ。』とか話してるわけじゃないよ。」

今月、ピクシーズはリーディング・フェスティバルの最終日のヘッドライナーという、イギリス内では今までで最も名誉あるステージに立つことが決まっている。

「ここまできてかなり規模がデカくなってきた。」チャールズは言う。「なんて異常な事態なんだとようやく気づきつつあるよ。ステージに立って、『マジでおかしいだろ!どうやってここまで来たんだよ、俺?』って思うんだ。

 たった4年前、俺らはボストンでバンドの勉強してたんだよ。セットリストはどのくらいの長さがいいのかって。今まで俺らがしてきたこと、本当に誇りに思うよ。両親からお金を借りて、学校やめて、ブーン!さ。今や奴らより2倍は稼いでるからね。唯一俺をがっかりさせることは、これって全然ロマンチックじゃないってことだね。最近じゃロックバンドをやってるのって全然かっこよくないんだよ。だからさ、ピクシーズってかなりカッコいいと思うんだよね。ダサかっこいいよね。

 デカいライブで演奏中に、少し止まって大勢のオーディエンスを見て考えるんだよ。『なんで彼らは俺らのことそんなに好きなんだろう?』って。多分俺らにはキャッチーな曲があるし。一緒にシャウトして歌える歌詞もあるし。俺らはすげーバカじゃないし。ほんの少しだけイカれてるだけで。一生懸命だし。スイートだし。暗いし。ビューティフルだし。それで十分だと思うよ。」

キムはこうまとめる。「私たちって、基本的にみんなにアピールできてると思う。精神的におかしい人を除いて。彼らって次の飯の種のことばかりで頭がいっぱいになって、ピクシーズのことなんか構ってられないから。次の明細の準備をしなきゃいけないし。次のロボトミー手術の準備で手一杯なんでしょう。遅かれ早かれ出会うことになると思うけど。ねえチャールズ、今度刑務所でライブできないかな?」次回のライブは、チャーリー・マンソンのプレイルームにて。


ピクシーズは2019年の9月13日に新作『Beneath the Eyrie』をリリース。再結成後の今も精力的に活動してくれてファンとしては嬉しい限りです。

"We will wade in the tides of the summer..." pic.twitter.com/C1KcaZL...

脚注

  1. 1990年5月発表の『Pod』。エンジニアはスティーヴ・アルビニ。
  2. 1st EP『Come On Pilgrim』から数えて4枚目。
  3. ピクシーズもカバーする「In Heaven」は、『イレイザーヘッド』の挿入曲。ピーター・アイヴァース作。
  4. 1990年当時。1965年生まれ。
  5. Bill Haley: ロックンロールの源流ともいうべきクラシック「Rock Around the Clock」を歌ったシンガー。
  6. キム・ディールのフルネーム。ジョン・マーフィ夫人とは『Come On Pilgrim』と『Surfer Rosa』での彼女のクレジット名。
  7. 1990年当時。1965年生まれ。
  8. 例の爆発したヘアースタイルの主人公。
  9. カーペンターズが取り上げた「Hurting Each Other」が有名なソングライターコンビ、ピーター・アデルとゲイリー・ゲルドの作品。ブライアン・ハイランドが1962年に歌って大ヒットさせた。日本語タイトルは「涙のくちづけ」。
  10. オーストラリアのシンガーソングライター、カイリー・ミノーグが1988年に発表した、彼女の代表曲。日本でも大ヒットした。日本語タイトルは「ラッキー・ラヴ」。
  11. 前述の「I Should Be So Lucky」の他、80年代後半のいわゆるユーロビートを牽引した、マイク・ストック、マット・エイトキン、ピート・ウォーターマンから成るプロデューサーチーム。頭文字を取ってSAWとも呼ばれる。
  12. Shirelles: 60年代に活躍した女性ドゥーワップ・グループ。有名曲に「Tonight’s the Night」や「Will You Love Me Tomorrow」がある。
  13. Shangri-las: 同じく60年代に活躍した女性グループ。「Remember (Walking in the Sand)」「Leader of the Pack」などが有名。
  14. アレックス・コックスの1984年監督作。
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