セックス・ピストルズ(とクラッシュ)を語るリチャード・ヘル (2013)

パンクのオリジネイターとして知られるリチャード・ヘルは、ミュージシャンというよりもどちらかというと詩人・文筆家タイプの人で、音楽活動と並行して詩集など多く出版してきています。2013年には自伝の『I Dreamed I Was a Very Clean Tramp (夢を見た。僕は小奇麗な浮浪者だった)』を出版しており、幼少期の思い出、トム・ヴァーレインとの出会い、音楽活動の開始から終わりまで、赤裸々に記されています。

以下は本の発売を記念して行われた、ポッドキャストインタビューの抜粋です。こちら↓のリンクから聞けます。2013年4月月22日。

Too Much Information with Benjamen Walker Podcast

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―(リチャード・ヘル自伝について)私のすごく好きな部分は、あなたがどれほど明確な「ビジョン」を当時から持っていたかを記している部分です。あなたは自分が何をしたいか、楽器を手にした瞬間からはっきりと解っていた。とても明確に。そしてそれに対して他の人たちも明らかに気づき始めた。(パンクの歴史について紹介されている本)『Please Kill Me』によると、あなたに続いて「リチャード・ヘルのクローン」が次々とCBGB’sに現れ始めますよね。それから、ニューヨーク・ドールズのマネージャーをする為にニューヨークにやって来たマルコム・マクラーレン。彼があなたを観て、あなたの「ビジョン」にインスパイアを受けて、イギリスに戻りセックス・ピストルズを始めることになるわけですが。あなたのビジョンというものが、ご自身にとっては非常に明確であったのと同時に、彼らの様な人たちにもそのビジョンは明確に映っていたというのは、当時から気付いてらっしゃいましたか?

当時、自分のやっていたことにまったく反応を示さない人も沢山いたんだ。何のリアクションもなしさ。だけど一方で、反応してくれたらそれはそれですごく腹立たしかった。何故ならほとんどが僕のやっていることの真似事だったから。「自分自身を見つける」というその裏にあるアイデアよりも、ただのファッションとして受け取られていたからね。自分が何者なのか、何を表現したいかって、興味があるものだよね。それから、自分のすべてを用いてそれを見つけようとするんだ。それが自分にとっては、ご存知のように、破れた服やあのヘアースタイルだったってわけで。自分の内側で何が起こっているかうまく表現できていると思ったよ。それが言葉以上の主張だったわけさ。

音楽制作だって楽しいよ。バンドを持って、自分自身を曝け出す術を見つけてさ。ただそれが本質ってわけではなくて…まあ今振り返ってみれば明らかだし、それはそれで必然だったろうけど。その、いつだって物事は他人にコピーされるような表面的な部分で機能してしまうんだよ。その裏にあるプロセスよりもね。

―思うに、人々があなたのアイデアをコピーして真似するだけでなく、ビジネスにして金儲けの道具に使われることも、実は当時から気付いていたんじゃないですか?それともセックス・ピストルズを見た時は「あぁ、OK、まぁそうか」って感じだったんですか?

彼らを大したビジネスだとは思わなかったけれど。彼らはただのバンドだし。雑誌に僕の格好を真似た四人組の写真が載っていて、その横にはマルコムの名前があるんだから。可笑しかったよ。結局彼らは、僕がその写真を見た瞬間からは想像も出来ないくらいに大きくなったけど。

―あなたはその時期について書かれてますよね。自分がどれだけやる気を無くしてしまって、しかし誰かに影響を与えるような立場には絶対になりたくなかったと。近頃巷ではわずかな功績を主張してお互いに騒ぎ合っているように見えます。例えばこれは誰某のスタイルの影響があるとか、これと関係があるとか…でも見たところあなたはむしろ当時からこうなることに気付いていたような。でもそうなりたくはなかったんですよね?何故です?そのような立場に陥ることでどんな危険性があると思いますか?

僕はもっと自分自身をリスペクトして大事に思っているからね(笑)。そうだね、あの髪型についてすらそういう風に思ってたよ。いつだったか、90年代だったと思うけど、メディアで自分の名前が出たと思ったら必ず「破れた服とボサボサ頭のオリジネイター」って書かれている時期があって。もしそれが自分に対する名声なら、有名になんかなりたくないよ。


―クラッシュの曲「I’m so bored with the U.S.A(アメリカにはもうウンザリだ)」に対して、「度が過ぎる」とおっしゃってるような箇所もありますよね…クラッシュとラモーンズの関係や、すべてニューヨークからの影響であることを考えると。彼らとツアーをして、そこでこんな風に歌われるのは「ちょっとやり過ぎ」という感じでしょうか?

そうだね、こういう(イギリスのパンク界隈の)人たち全員、彼らの「正直なフリ」っていうのは本当に…馬鹿らしいと思っていて。彼らは面白いし、観ていて楽しいし、様々な影響も与えているけど、正直ではないよ。セックス・ピストルズは正直じゃない。ジョン・ライドンは正直じゃないよ。彼の言うことは自分を美化する為の見せかけだけのひねくれた解釈でしかないよ。

―一緒にツアーも周ったクラッシュについてはどうですか?彼らの音楽が主張する政治的なスタンスについても話されてましたが。

彼らについての知識も興味も、正直あまりないんだよね。


Richard Hell, Johnny rotten などで検索すると、日時は不明ですが、同じ場所に居合わせている画像も見られますし、リチャード・ヘル&ヴォイドイズの未発表ライブ盤『TIME』では、1977年ロンドンのライブでアンコール前にジョニー・ロットンが出てきて観客をアジっている様子も聴けます。ヘル側には複雑な思いがありつつも、交流はあったようですね。

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