スティーヴ・アルビニ ビッグ・ブラック『Hammer Party』のライナーノーツ (1986)

ビッグ・ブラックは1981年~87年にシカゴで活動をしていました。スティーヴ・アルビニ、サンティアゴ・ドゥランゴ、ジェフ・ぺッツァティが主なメンバー。

1982年に1st EP『Lungs』、1983年に2nd EP『Bulldozer』、1984年に3rd EP『Racer X』をそれぞれ発表。活動から5年後の1986年に1st LPの『Atomizer』を発表しますが、それと同時に『Lungs』と『Bulldozer』をコンパイルした作品『Hammer Party』をリリースしました。当時出たLPには『Racer-X』は収録されませんでしたが、CD化の際に追加収録されました。現在はiTunesでもそれぞれのEPが配信されてますね。

以下はアルビニ本人による『Hammer Party』のライナーノーツの和訳です。1986年。

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このアルバムは初期ビッグ・ブラックの2枚のEPをリイシューしたものだ。『Lungs』は1982年の12月に、『Bulldozer』は翌年の12月にリリースされた。その二枚の間にメンバーチェンジがあった。『Lungs』では、スティーヴ・アルビニがほぼ全ての楽器、ローランドはローランド1、ジョン・ボーネン2はメーメーサックスをメーメーと吹いている。マーク・ヘイス3は一曲でちょっと叫んでいるが、その後クソ野郎になり参加の事実を認めようとしていない。『Bulldozer』ではスティーヴがまたもやボーカルとギター(チーン4)、サンティアゴ・ドゥランゴはギター(ブルーーン5)、ジェフ・ぺッツァティはベース、パット・バーン6はドラム、そしてローランドはまたもやローランド。『Lungs』はシカゴの治安の悪い地域にある二つの異なるアパートにて録音された。スタジオメディアにてミックス。4トラックレコーダーはサム・フィッシュキン7からビール瓶1ケースと引き換えに借りた。『Bulldozer』はちゃんとしたライブスタジオでレコーディングされ、別のスタジオでミックスされた。イアン・バージェス8がエンジニアを務めた。『Bulldozer』の制作費は当時シカゴを拠点としていたフィーバーレコードが持ってくれた。投資分の利益を払うまで辛抱強く待っていてくれた事に関して、バンドメンバー一同、また制作に関わった者一同、心から感謝している。

リイシューに際して過去二枚のオリジナルジャケットを再度そのまま使用することも考えていたが、そこに表記されているものの多くは今見ると間違った解釈をされかねないし、青臭い。当時は信念を持っていた、はずだ。しかしその信念にはなんの根拠もないことが証明されたし、当時の失敗を今繰り返すことは、更に大きな失敗になる。オリジナルの『Lungs』にはおまけインサートも入っており、記載されているものは以下を含む:紙幣、ゴム製の動物おもちゃ、ウィル・ティザード9の髪の毛の束、小さい釣り針、クレヨン画、トリニ・ロペス10のアルバム、血の付いたガーゼ、雷管、爆竹、剃刀、水鉄砲(装填済)、アンティークのスプーン&フォーク、バズーカ・ジョー11の漫画、ブルース・リーのトレーディングカード、心霊写真、古いコンドーム、その他諸々。『Bulldozer』の方はもっとシンプルで、歌詞カードと老人ホームの恐ろしい爺婆のポスター付きだ。内200枚はエッチングで作った亜鉛メッキ鋼製ジャケットだったんだが、酷く重かった。

当時はバンドに所属しているということだけで、非常に興奮したものだった。演奏する場があり、人々がバンドを観に足を運ぶ。しかしいつしかそれにもうんざりしてしまい、以前に比べ今はワクワクすることも少なくなった。こんな風にすべてが淀んでしまったのもそのせいじゃないかと、考えてみればみるほど、正直、それが一番もっともらしい理由に思えてくる。今までやってきたことをもし今また一から始めるとしたら、熱意も根気も間違いなくここまでにはならないだろう。実際、本当にやろうとするかどうかすら怪しいもんだ。まったく近頃は不公平なことが多い。

もし粗探しがしたいなら、全部出揃っている。俺らはなんとかしようと頑張ってきた。実際、今もそうさ。時間はすべてをおかしな方向に持って行く。当時はワイルドに聴こえたのに、今となっちゃおどおどしてるように聴こえるのも、ありがたいことに沢山のオーディエンスにちやほやされて感覚が鈍ってしまったからか。よく出来たクソだと思ったけど。当時はかなり良かったんだけどな、正直。俺らはいまだに気に入ってるよ。ただ1986年の音を期待しないでくれ。

当時世話になった人たちには、きっと未だに世話になっていると思う。みんなのことは覚えてるけど、どうやって恩を返したかは忘れてしまった。申し訳ない。俺たちなりに精一杯やったつもりだ。

おい、ちょっと待ってくれ。これ以上懐かしんだってなんの意味もないな。クソ、こんなの昔の出来事だよな?レコードはここにある。君が気に入ってくれる事を祈ってるけど、これを書いてる今はもう深夜0時過ぎで、俺はまだ仕事してるんだよ。ビッグなロックスターだろ。手首を切りたくなるような、ちゃんとした仕事をしてるんだよ。それでいて俺らは今も貧乏なままさ。

手紙を書いてくれれば俺らは読むよ。今までにもらった手紙には最高のものもあって、いつも返信しようとは思ってるんだ。だってさ、マジで、君らはわざわざ時間をとって手紙を書いてくれたわけだろ。俺らが費やした以上の時間を。でもさ、正直、光熱費を払わなきゃいけないし、8時~5時の仕事がいつでも待っていて、そんな時間もマジでないんだよ。たまに手紙を2、3通もらうし、週末は飽きるまで返信を書いてる時もあって、それでも書き終えた時には洗濯物がクソ溜まってるんだ。でも、本当、マジで、俺たちは馬鹿じゃないから。ただ他にやらなきゃいけない事が沢山あるってだけで。住所はイリノイ州の×××××。特に小包が届くと嬉しいね。ヒントヒント。

スティーヴ


『Lungs』は当時19歳のアルビニがほぼすべての楽器を一人で演奏・録音しており、ここから彼のキャリアが始まっています。本人曰く「今まで作った中で最低の作品」とのことです。翌年の『Bulldozer』がバンドを携えての初の録音になります(上記の通り、「Jump the Climb」を除いてドラマーがドラムを叩いています。ローランドも)。『Racer-X』ではさらに強度を増して貫禄さえ感じますね。作品を重ねる毎にキレキレになっていきます。

参照

Wikipedia – Lungs

Wikipedia – Bulldozer

School Days with Steve Albini

Wikipedia – Bazooka Joe

Bazooka Joe

Wikipedia – Iain Burgess

1989 interview with record producer iain burgess

脚注

  1. ドラムマシンのRoland TR-606のこと。
  2. アルビニの学友。
  3. 1983年当時アルビニのルームメイトだった人物。
  4. 鐘の音かと思われる。
  5. モーター音かと思われる。
  6. アージ・オーヴァーキル(Urge Overkill)のドラマー。
  7. シカゴのエンジニア/プロデューサー。
  8. シカゴのプロデューサー/エンジニア。80~90年代のシカゴ・中西部ポストパンクサウンドを作ったといわれているシーンの中心人物。手がけたバンドはビッグ・ブラックの他に、ネイキッド・レイガン (Naked Raygun)、エフィジーズ (Effigies)、ライフル・スポーツ (Rifle Sport)、ミニストリー (Ministry)、ポスターチルドレン (Poster Children)など。2010年没。
  9. シーンにいた人物で、現在は雑誌編集者、音楽レビュアーなどをやっていると思われる。
  10. 63年にデビューしたフォークシンガー。「天使のハンマー(If I Had a Hammer)」はチャート一位になり、ゴールド・ディスクを受賞。
  11. Bazooka Joe and his GANG: 1953~4年に生まれたアメリカンコミックのキャラクター。ビッグ・ブラックのアルバム『Atomizer』には「Bazooka Joe」という曲もある。
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